アイザワさんとアイザワさん
「……しかし、樹ちゃんも人が悪いよなぁ。ずっと黙ってるなんてな。……しかし、二人そろって気がつかないなんてなぁ。」
やっぱり源ちゃんも相澤がおばあちゃんの名前を口にしたあの瞬間に、相澤がレオ先生だったってことに気がついていたんだ……。
ずっと気がつかなかった事は私も反省している。
最初に声を聞いた時、とても懐かしい声だと思ったのに深く考えなかったことも。
日々の会話の中にだって、思い出すヒントはたくさんあったのに。
記憶が曖昧だったとは言え、私のほうが源ちゃんよりもずっと相澤と接する時間が多かった。
「初ちゃん……樹ちゃんと話するんだろ。」
うん。とうなずいた私に
「頼んだよ。俺の分まで樹ちゃんにがつんと言ってやりな。」
と源ちゃんは笑いながらそう言った。
源ちゃんらしい言葉に思わず笑ってしまう。
そして源ちゃんは頑張れよ、とまた私の頭を撫でてくれた。
どうやら病室の外の会話は源ちゃんの耳まで届いてしまったらしかった。
おじいちゃんに『告白』を応援される孫ってどうなんだろう……と思いながらも、この優しい手が失われなかったことを嬉しく思った。
この感謝の気持ちだって伝えなきゃいけない。
明日……私は相澤 樹に想いを告げる。