アイザワさんとアイザワさん
②待っています。
12月24日。
この日は羽浦駅前商店街が一年で一番忙しくなる日。
ケーキ屋さんはケーキ作りに追われ、惣菜屋さんや名前に『チキン』が入ってるファストフード店はオードブルやフライドチキン作りに追われる。酒屋さんはビールやワインやシャンパンの販売に忙しい。
だけど、コンビニだって負けてない。
今言ったヤツ……ここで全部揃っちゃうからね。
だからこの日はコンビニも一年で一番忙しい日だ。
毎年、クリスマスイブのこの1日だけはシフトも3人体制になる。スタッフはフル出勤だ。
朝日勤で出勤したのは茜さんと唯ちゃん。
そこに私が夕方までのサポートで加わる。
『サポート』なんて言ったら聞こえはいいけど、実際はただただレジで売ってる揚げ物を無心で揚げる人に付けられた名前だ。
サンキューマートのフライドチキン、通称サンチキは、うちの看板商品なので、商店街の入り口という最高の立地にあるうちの店のチキンは飛ぶように売れる。
朝シフトに入った瞬間から、フライヤーの前から一歩も動けなくなった私は、チキンのオリジナルキャラクター、ニワトリのサンチキちゃんの笑顔に軽く殺意を抱きはじめていた……
「お疲れ様、少し休め。ここは替わるから。」
お昼近く、いつの間にか後ろに立っていた相澤に声を掛けられた。