アイザワさんとアイザワさん
19時。サポートも全て終了し、ケーキの引き取りやレジの状況をチェックして、彼女は残りのスタッフに「お疲れさまでした。頑張ってね。」と声をかけて帰って行った。
年末年始のシフトを話し合っていた時は泣かせてしまってまともな話し合いにならなかったし、源次さんが倒れたあの日からは、仕事の会話すらしていない。
なのに、自分が指示していない所まできちんとチェックしているその仕事ぶりに感心したのと同時に頼もしくなった彼女を見て、やっぱり、もう自分の存在は必要ないのかもしれない……そう感じていた。
もうそばにはいられないと突き放したのは自分なのに、そんな感情を抱くなんておかしな話だ。
何だか黙っていると、とりとめの無い事ばかりを考えてしまう。……これ以上余計なことを考えずに済むくらい、今日が忙しい日でよかった。
情けない感情を振り払うように、俺はしばらく仕事に没頭した。
***
20時半。夜勤の引き継ぎまであと一時間。
夕方までは混みあっていた店内もだいぶ落ち着きを取り戻していた。
もうフライヤーに張り付かなくていいだろう、と思いスタッフルームへと戻る。
夜勤の九嶋が来たら、後はサポートに回る予定だった。
その時、「お疲れさまでーす」と陽気に店に入って来る男の姿が防犯カメラのモニターに映った。