アイザワさんとアイザワさん
***
先に立って歩く私の後を相澤は戸惑いを隠せない表情で付いてきていた。
私は住宅地を離れ、公園を抜け、細い路地へと入っていく。
やがて、目の前が開け、広い空き地のような場所に出た。
「……ここは?」相澤が聞いてきた。
「おばあちゃんとの思い出の場所です。」
今は雪が積もってただの白い空き地だけど、ここには子どもの頃の思い出がいっぱい詰まっている。
「…私、子どもの頃いじめられてたんです。」
背が高くてガリガリに痩せていた私は、いつも男子のからかいの対象だった。
「痩せっぽちで『棒』みたいだって言われて笑われて悲しくて……泣いてる私を、おばあちゃんが『ひみつの場所』に連れて行ってくれたんです。……ここは夏になるとひまわりが一面に咲くんですよ。」
ほら、みんな笑顔で咲いてるよ。……枯れたってまた来年には咲くんだよ。だからひまわりちゃんも泣いちゃだめだよ。おばあちゃんはそう言って慰めてくれた。
そして、私に魔法のコトバをくれた。
だけど、ここは辛い思い出の場所でもあった。
「ここ……おばあちゃんがいなくなって……見つかった場所なんです。」
おばあちゃんがいなくなった日、私は家からの電話に気がつかなかったけど、着信に気づいて一緒に探していたらきっとこの場所を思い浮かべたはずだ。あの時のおばあちゃんの中では、『相沢 初花』はいじめられて泣いていた頃の小さな子どもの姿をしていたはずだから。
相澤は黙って私の話を聞いていた。
少しだけ、悲しげな表情を浮かべながら。