アイザワさんとアイザワさん
想いを自覚してしまったら、もう気持ちを止められなかった。
今まで彼が私に触れたところの全てが、この人のことが……相澤 樹のことが好きだって、愛しくて必要だって、そう言っている。
この瞬間だって……もっともっと近づきたい。
触れたい。あなたの側に寄り添って……その声を聴かせて欲しい。
私は、その衝動に逆らうことなく相澤のそばに近づくと、そっとその手を握った。
私は7月にあなたの涙を見たその瞬間から……
ずっとこうしてそばにいて寄り添いたかったのかもしれない。
あなたは私の記憶の蓋を開けて『ほんとうの姿』を思い出すきっかけをくれた。
あなたが恋した『相沢 初花』は、明るくて元気で夢を追い求めている私。
でも、あなたを好きになった時に気がついたのは、ボロボロに崩れそうなほど、泣き虫で弱い私だった。
3月から一緒にいた私の姿は、あなたが知っている『ほんとうの私』とは違ったかもしれないけど、泣き虫な私も、恋に恋する私だって、この4年間は私の一部だった。
今までは『恋』や『現実』から逃げてたけど、でもあなたは近づいてくれた。
私は、あなたに『恋』をしている。
好きな人には私だって近づきたくなる。求めたくなるし、分かり合いたくなる。
いきなり手を握った私に驚いて立ち尽くしている相澤に向かって、私はこう言葉をかけた。
「……私は、あなたのことが許せません。」
そう言った瞬間、相澤は悲しげに顔を歪めたけど構うことなく、そのまま私は話を続けた。