アイザワさんとアイザワさん
私の好きなこの人は
冷たくて、意地悪で、とても嫌みっぽい人だ。
でもほんとうは分かりにくいけど
とても温かくて、優しくて……
歳上のくせにちょっと泣き虫で、
ずいぶんと可愛らしい人だ。
「参ったな……。」
照れたように泣き笑いをして、相澤は言った。
「俺の心を揺らすのは、いつもお前だけだよ。人生でこんなに欲しいと思って求めたものなんてなかった。」
視線が交わり、私達はそのまま見つめ合う。
お互い、泣いて、笑ってひどい顔をしていた。
「離れることがお互いのためだって思ってたけど……そうじゃなかったんだな。俺だってお前のそばにいたい。離れたくないんだ。俺は……やっぱりお前のことが好きなんだよ。」
そう言って握りしめた手をそっと引き寄せて、抱き締めてくれた。
「初花、好きだ。これからは、逃げない。一緒に向き合って生きていくよ。だから、ずっと……ずっと俺のそばにいて欲しい。」
想いの通じ合ったこの瞬間は目眩がするほど幸せで、涙がとめどなく溢れては流れていった。
私と同じように相澤の目から流れる涙は、はじめて頬にキスをしたあの日のようにとても綺麗な涙だと思った。
相澤は私の涙をすくうように目蓋に、頬に口づけを落とした後で、ゆっくりと口唇を重ねる優しいキスをしてくれた。
「……好きです。」
涙と一緒に溢れる気持ちを押さえきれずに伝えると、抱きしめられた腕に力が入った。
苦しいけど……求められていると思うと全身に嬉さが広がっていった。
しばらく、寒さも忘れて私達は抱き合っていた。雪はいつの間にか止み、月明かりだけが二人を照らしていた。
静かな、静かな、二人だけの約束の夜だった。