アイザワさんとアイザワさん

手を繋いで私のアパートに向かう途中でも、私の動揺はなかなかおさまらなかった。


「そんなにびくびくすんなよ。」

相澤のさっきまでの優しい微笑みは、既にニヤニヤとした笑いに変わっていた。


「別に取って食おうって訳じゃないんだからさ……まぁ、『何もしない』とは言わないけど。」

そしてまた私の目を見てニヤリと笑った。


……『食べるけどね』って言ってるようなもんですけど。

はっきりと言葉にされて、また心臓がドキドキとうるさく鳴り始める。


とうとう堪えきれなくなったのか、相澤はくっくっと喉を鳴らして笑い出した。


「笑うことないじゃないですか……。」


「いや、あんまり『何にも考えてませんでした』って顔してるからさ……。」


やっぱり私の頭は透明なんだろうか……。


「どうせ夕勤以外はみんな今日のこと知ってるんだろ?二人でいたら『何かあった』って目で見られるんだから、もう開き直ったほうがいいって。」

「せっかくなんだから『恋人と過ごすイブ』ってのを楽しませてくれよ。」


そっか。好きな人と一緒にいるってほんとうは『楽しいこと』だった。確かに緊張して黙ってばっかりいるのは……感じが悪かったかもしれない。
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