アイザワさんとアイザワさん
「いらっしゃいませ」
3月。人生のピンチです。
新しいバイトの子が入って1週間経った。
研修だって終わったし、雰囲気にも慣れてきた。そろそろ、例の質問が飛び出すはずだ。
私はすでに答えを用意している。
いつでも、こい。
「あのー……副店長?」
ん?来たか?
「副店長と、店長ってぇー」
……来た。
私は、被せ気味に用意している答えを言う。
「名字が同じだけだから。きょうだいでも、夫婦でもない。赤の他人だから。」
……決まった!!
これで余計な視線に惑わされずに仕事ができる。すっきり、爽快だ。
こんな煩わしいことに時間を費やすようになったのは、あいつが現れてからだ。
そう、あれはちょうど一年前の3月のこと。
私は、人生のピンチを迎えていた。