アイザワさんとアイザワさん

しばらくお墓の前で手を合わせた後で、相澤が私に話しかけた。

「あのさ、初花。……年明けにでも、一緒にデイサービスに行かないか?」


おばあちゃんのことがショックだったとはいえ挨拶もなくボランティアをやめてしまった私が訪ねてもいいのかな……。そう思っていたのが顔に出てしまっていたらしい。


「親父も瞬も初花のことを心配してたから、一度元気な顔を見せたら喜ぶと思うんだ。スタッフでも何人か知ってる人もいるだろ?」
大丈夫だよ、と言うように優しく言ってくれた。


「大先生や瞬先生が歓迎してくれるんだったら、嬉しいです。一緒に行きましょうね。」


二人が気にかけてくれていたことが嬉しくてそう答えたのに、なぜか相澤は表情を曇らせた。


……どうしたのかな?


そう思っていると、
「初花。……お前瞬に会ったのか?」
と聞かれた。


ギクリとした私は、相澤オーナーに「他の人には言わないでね」と言われたことも忘れて「どうして分かったんですか?!」と思わず答えてしまっていた。


「お前、『瞬先生』なんて呼んでなかったからな。どうせ瞬が名前で呼べって言ったんだろ?」

……それだけで分かっちゃうなんて。


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