アイザワさんとアイザワさん
私は年末年始は休み無しで仕事に入っていて、今日は久しぶりのお休みだった。
相澤は夜勤明けだった。相澤の仕事が終わるのを待ってから、私達はオーナーと話をするために一緒に事務所に向かっていた。
実は相澤がオーナーに店舗を移動したいと言っていたことを私達はお互いにすっかり忘れてしまっていたのだ。
その事に気がついた時には、もう年も明けていて……
やっと気持ちが通じ合ったというのに、離れ離れになってしまうかもしれないというちょっと残念な事態になってしまっていた。
「もう移動の手続きとか準備とかに手をかけてたら変えられないと思う。初花、ごめんな。」
「ごめんね、はお互い様ですよ。すっかり忘れてましたからね……とにかく、オーナーに説明しに行きましょ。」
気づいた時には一瞬慌ててしまったけど、別に離れたからといって気持ちまで離れる訳じゃない。一生一緒にいると覚悟を決めた今の私達には、これくらい大したことじゃないんだから。
***
事務所に着く。
玄関を入ろうとして、相澤の表情がちょっと曇った。
玄関には見慣れた相澤オーナーのエナメルの革靴の他に、上品な風合いの革靴が、きちんと揃えて置かれてあった。
玄関に上がり、リビングに足を踏み入れる。
相澤オーナーの他に、リビングで私達を待っている人がいた。