アイザワさんとアイザワさん
「お前だって分かってるはずだと思ってたけどな。トラウマは簡単には消えない。思い出す存在がいるだけで心が壊れてしまうきっかけを作ってしまうこともある。」
「お前と初花ちゃんは、お互いその『きっかけ』を持っているのに、一緒にいてうまくいくと思っているのか?」
確かに大先生の言う通りだった。
私達の間にはおばあちゃんが亡くなってしまったこと、という変えられない事実と消せない傷が確かに存在している。
……だけど、それが『うまくいかない』ことに繋がるんだろうか。
私達はその事実を一緒に受け入れることを誓った。少なくとも、今は辛くなるとは思えない。
先生には、ちゃんと私が今思っていることを伝えなくてはいけない、と思った。
この前の瞬先生との会話を思い出す。
『初花ちゃんがそう思ってるんだったら、それが真実だよ。』
そう、『誰に何を言われようと』。たとえ私の恩人の先生が言ったことだったとしても、だ。
「先生。」
私は一つ、深呼吸をして背筋を伸ばした。
『心が押しつぶされたり、負けてしまいそうだと感じたら、一旦深呼吸をして気持ちを落ち着かせて胸を張ってごらん。初花ちゃんは姿勢が綺麗だから、背筋が伸びたら気持ちにも張りが出ると思うよ。』
そう言って昔先生が教えてくれたように。
間違いなく自分の気持ちを伝えられるように。