アイザワさんとアイザワさん
「私は樹さんと一緒にいて不幸になるとは思えません。傷を隠して忘れたふりをして生きていくよりも、醜い傷でもそれを隠さずにいられる存在が側にいてくれるほうが幸せだと思ったんです。……私の傷を認めてくれるのは、樹さんだけです。」
私の気持ちは間違いなく先生に伝わっただろうか?
先生は相澤のほうを向くと「お前はどうなんだ?」と聞いた。
相澤は、大先生と相澤オーナーに向かって頭を下げた。
「……すみません。俺は約束を破りました。」
最初に出てきたのは謝罪の言葉だった。
「約束を破って自分の気持ちを押し付けて、俺は彼女を傷つけた。でも、傷ついてないって言ってくれて……過去の後悔も傷も一緒に抱えて生きていこうって、そう言ってくれた。俺は一生彼女のそばにいる。そう約束したんだ。」
「この約束は絶対に破りたくない。一生かけて守っていく。だから、認めてほしい。」
そう言ってまっすぐ先生のほうを見た。
相澤の言葉を聞いた先生は、「二人の覚悟は分かった……別に最初から反対しにここに来た訳じゃない。」真面目な顔でそう言ったかと思うと……
「今日来たのは、樹がどんだけ初花ちゃんのことを好きか知りたかっただけだしな。」そう言って表情を崩してニヤニヤと笑った。