アイザワさんとアイザワさん

「もう籍を入れたらいいじゃないか。」

一生一緒にいるって言うならさ、と大先生はさらにとんでもないことを言い出した。



びっくりして固まった私達に先生は気にする様子もなく言葉を続ける。


「瞬はまだまだ落ち着く気配もないし……二人とも30過ぎてたって結婚するなんて話も今まで無かったしなぁ。思い立ったら吉日、って言うだろう。」



思い立ったのは先生だけだってば……



まずい。このままでは私まで先生の勢いに巻き込まれてしまう。


ずっと一緒にいると決めたから、いつかは……とは思っているけど、いきなり結婚なんて早すぎる。


私達……年末から付き合い始めたばっかりですよ?



「親父、待てって。勝手に決めんなよ。」
ようやく慌てたように相澤が口を挟んだ。


「まだ母さんにだって何も言ってないんだ。ここだけで進められる話じゃないだろ?……それに……」


そう言ってから、ちらりと私のほうを見て少し言いにくそうにしながら言葉を続けた。


「初花の両親にだって、きちんと挨拶しないと。……とにかく、まだ先の話だよ。」



その言葉にさすがの先生も黙ってしまった。

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