アイザワさんとアイザワさん
「樹のこと宜しくね。複雑そうに見えるけど、単純で不器用で……でも、優しい奴だから。」
「分かってます。私は『誤解』しませんよ。優しいところもたくさん知ってますから。」
瞬先生が以前、相澤のことをほんとに分かる人が側にいてくれたらいいのにと言った時は、私は自分の気持ちが分からなくて戸惑ってしまったけど今なら自信を持って言える。
ちゃんと彼のことを知りたいと思っているし、ずっとそばにいたいと思っているから。
「……瞬先生は、側にいて欲しいと思う人はいないんですか?」
聞かれてばかりだとなんだか悔しいので、私も質問を返してみる。私の言葉に瞬先生は思ったよりも真面目な顔つきになってこんな話をしてくれた。
「『心が求める人』を俺はずっと探してるんだけど、難しいよね。特に俺たちは両親を見てきたし……愛情なんて一瞬で消えちゃうから、それよりも強い感情で分かり合える人がいたら一生そばにいられるんじゃないかと思うんだよね。」
「俺も、初花ちゃんみたいに分かりやすくてかわいい人がいいんだけど……樹じゃなくて、俺にしとかない?」
途中までは真面目な話だと思ってたのに……
「それって、私も『単純』ってことですよね?振り回されるだけなので、お断りします。」
そう答えると、それは残念だね、と全く残念じゃない口調で話して瞬先生は「あ、時間だ。戻らないと。じゃあ、またね。」と医院のほうへと戻って行った。