アイザワさんとアイザワさん

歳も身長もたぶん私と同じくらい。顔は相澤のほうを向いて話をしていたから、よく見えなかったけど……腰くらいまであるストレートの黒髪を揺らして歩くその女の人はコートを着ていても分かるくらい、胸が大きくて凄くスタイルのいい人だった。


そのまま二人は駐車場に向かって歩き出して、一緒に車に乗ってどこかに行ってしまった。


「店長……で間違いなかったよね?」


遠慮がちに茜さんが聞いてくる。


「間違いないですよ。車も……そうでしたし」


「向かいの店って、ジュエリーショップだよね……」鞠枝さんも言いにくそうに口にした。


しばし沈黙が流れた。


もやりと、また黒い感情が胸から溢れだしたのを感じた。


「妹さんとかじゃなくて?」
また考えていることが顔に出てしまったのだろうか、鞠枝さんがフォローするように聞いてきた。


「樹さんには双子の弟がいるけど…他にきょうだいはいませんよ。」


聞いた鞠枝さんが『しまった』という表情になる。


やがて茜さんが静かに口を開いた。


「初花ちゃん。気になるんだったらちゃんと聞かないとだめよ。うやむやにしてたら、ずっとそのことが心に溜まって相手を信じられなくなるからね。……私みたいに。」


どういうことだろう?私みたいに?


疑問に思っている私達二人に茜さんは、
「私、離婚することになったの。」
と話した。
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