アイザワさんとアイザワさん
アパートに戻ると、間もなく玄関のチャイムが鳴った。私は覚悟を決めてドアを開けた。
「初花、大丈夫か?」
夜勤が終わった時間から一時間も経っていなかった。私のことを心配して急いで来てくれたのかな……と思ったらなんだか泣きそうな気持ちになった。
「具合が悪いって聞いたけど、どうなんだ?熱は……ないよな?」
そう言って額に当てようと伸ばされた手を見た途端に、びくっ、と反射的に避けてしまった。
「……初花?」
「……大丈夫……です。」
向き合おうと決心したばかりなのに、こんな頑なな態度を取ってしまう自分が情けなかった。
こんな可愛くない事ばかりしていたら、ほんとうに呆れられちゃうかもしれない。
素直に言いたいことが言えない自分がもどかしい。
視界がだんだんぼやけていって……気がつくと涙がにじんでいた。
そんな私の様子を見て、相澤は、しょうがないなーといった感じで笑いながら言った。
「またいろんなこと考えてるみたいだけど……不安なことは全部教えてくれよ。昨日はびっくりさせて悪かったけど……昨日の朝だって……俺のこと避けてただろ?一体何があったんだ?」