アイザワさんとアイザワさん
そう言っても、まだ不思議そうにしている私に、相澤は苦笑いしながらこう言った。
「まだ、あいつが誰か分かんない?初花、一回会ったことあるだろ?」
「裕美だよ、妹の。」
……妹?
瞬先生以外にきょうだい……いたっけ?
会ったことなんて……ないよね?
呆然とする私に相澤はこの前話しただろ……とやれやれといった表情で言った。
「母親の再婚相手の、子どもだよ。」
……あっ!
どうして鞠枝さんに妹じゃないの?と言われた時にすぐに思い浮かばなかったんだろう……。
そう思って一瞬反省したけど、すぐに違う、と思い直した。
だって、私が前に会ったのは5年も前だ。
服装だって雰囲気だって違っていたから、全く結びつけて考えられなかった。
それに……何より、お店の前で見た相澤の表情は『妹』に見せる顔じゃなかったから。
だから、きょうだいだなんて思わなかったんだもの。
「……ほんとに『何も』ないんですか?」
「ないよ。……信じてくれよ。」
「だって……樹さん、お店から出てきた時に凄く優しい顔で裕美さんのこと見てたんですよ。……私と二人きりの時にしか見たことのない顔をして……他の人にもそんな顔をするんだ、って思って悲しくなって……」
「……だから樹さんのことは信じてますけど、あの顔を見たから、不安になっちゃったんです。……信じきれないんです。」