アイザワさんとアイザワさん

「裕美はさ、『父親』に溺愛されて、愛情ばっかり食べて育ってきたような子なんだよ。だからワガママだし、思い通りにならないと気がすまないとこがあってね…。」


「まぁ、基本的には悪い子じゃないから許してあげてね。言い分は手紙に書いてると思うからさ。」


そう言う瞬先生は伝えたい事があると直接自分の口で言わないと気がすまない人なんだ、ということが最近分かってきた。


ほんと……樹さんの周りって、ちょっと強引で思い通りにならないと気がすまない人達ばっかりだ。


「そういえばさ、俺に樹のこと『誤解』しません、って宣言したくせにあっさり『誤解』したよね。やっぱり初花ちゃん、可愛くて面白くて飽きないなー。」


……若干バカにされているような気はしたけど、これも『もう誤解しちゃだめだよ』と言われているんだと前向きに解釈することにした。


じゃないと、樹さんの『家族』とうまく付き合える気がしない……。


瞬先生は「樹に飽きたら、俺のとこにおいでねー。」としっかり口説き文句を口にして帰って行った。


その言葉を聞いて「飽きませんから!」と思わず口にしてしまい……源ちゃんと、今日の相方唯ちゃんのニヤニヤ笑いに囲まれて、恥ずかしさが倍になった気がした。
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