アイザワさんとアイザワさん

「買い物してたのだって、俺は荷物持ち。夜勤だって言ってんのに叩き起こされるわ、付き合わされるわ、ばったり初花に会うわでほんと、散々だったよ……」


「ずっと裕美さんってあんな感じだったんですか？」


手紙を読んだ時に感じた違和感をそのまま聞いてみる。


「5年前のことを思い出したんですけど……もっと、5年前は、こう……先生達に近づくなって言われてるような気がして、話をしててちょっと怖かったんですけど。」


ブラコンとは違う、ちょっとした威圧感。
私は馨さんと付き合っていたから、まともに受けることはなかったけど……あれって嫉妬以外の何物でもないと思う。


樹さんはあー、と思い当たったようにうなずいた。

「裕美はさ、小さい頃に母親を亡くして、父親にその分溺愛されて育ったんだよ。だけど思春期真っ只中に父親が再婚して、今度は歪んだブラコンになったって訳。」

「しばらく大変だったんだよ。一緒にも暮らせないし、何か用事を見つけては医院のほうにも押しかけてくるしさ。」


確かに大変だったと思うけど、裕美さんの気持ちも分かるなーと思う。父親に甘えられなくなった途端に格好いいお兄さんが二人もできたんだもんね……。