アイザワさんとアイザワさん
それでも突き放されることもなく、裕美さんは家族の優しさに守られていたんだろう。
新しい家族とだって、今では普通に『家族』として一緒にいることができているのだから。
「『家族』みんなに愛されてるんですね……裕美さんは。」
気がついたら思わずそんな事を口にしてしまっていた。
我が儘を言っても、思い通りに行動しても、そのまま受け止めてもらえる裕美さんが羨ましかった。
だって、私には我が儘を言える『家族』がいないんだから……
「初花。」
私が何を考えているか分かってしまったのだろう。樹さんはそんな私に側においで、と手招きをした。
呼ばれるまま近づいて、そっと胸に顔をうずめた。いつもの温もりとシトラスの香りにざわめきかけた心が落ち着いていく。
「初花も……思った事を話してもいいよ。もっと我が儘になってもいい。」
「今でも充分我が儘ですけど……」
これ以上甘やかされたらダメな女になってしまいそうだ。そう言っても、
「もっと、だよ。嫌われたくない、とか、呆れられる、とかいつも遠慮してるだろ?」
と言われてしまった。
……確かにそうかもしれない。