アイザワさんとアイザワさん
5月は甘くて苦いのです。
5月。
世間はGWだけど、観光地でもない商店街はいつもの活気がなく、閑散としている。
うちの店も、暇をもて余していた。普段来るお客さんは会社勤めをしている人がほとんどなので、こういった連休やお盆、年末年始はとても暇になる。
しかし、地元の常連さんにはこの状況はありがたいらしい。
「よう、初ちゃん。」そう言ってにこやかに友達を連れて入って来たのは、源ちゃんだ。
「コーヒーくれや。皆にも一杯ずつ。」
まるで、カフェのような気軽さだ。
「源ちゃん、パイプ椅子そんなに無いよ?ってか座る場所もないし。ゆっくりしたいんだったら、『Felicita』とか行ったら?」
お友達を立たせるのも悪いので、やんわりと『お断り』の言葉をかけてみるが、
「あんな気取ったとこで飲むコーヒーなんて、美味しくねぇや。」と返されてしまった。
『Felicita』ばかにすんな!源!
ちょっと怒りを感じながら、どうしたものかと思っていたその時、「スタッフルームにある椅子も出せば足りるだろう?」と、すぐ後ろで声がした。
驚いて、慌てて振り向く。
いつの間に私たちの話を聞いていたのだろう?スタッフルームで仕事をしていたはずの相澤がすぐ後ろに立っていた。