アイザワさんとアイザワさん

そんな可愛い我が儘だったらいくらでも言っていいんだけど?そう耳元で囁かれて耳朶にキスをされた。


そのままキスは耳の後ろや首筋、うなじへと啄むように落とされていく。


「んっ……樹さん……」


くすぐったさとは違う感触に徐々に息があがっていった。


「で、今日は一緒にいるだけ?」

そう言いながらもその口唇はキスをすることを止めずに、私の首筋をゆっくりと動き回っている。


さっきまで私の心が落ち着くように、と優しく頭を撫でていた手は頭の後ろに回されて、長い指を髪の毛の中に差し込んで、絡めるように撫で回し始めていた。


彼は私がこういう風に髪の毛を触られると気持ちが高ぶってくるってことを知っている。


知っていて……触れながらもこうして聞いてくるのは、私の口からどうしたいか言って欲しいからだ。


私がその言葉を口にすることがどうしようもなく恥ずかしいってことまで分かっているくせに……

こういう時の樹さんは、ちょっと意地悪だ。


結局……樹さんの『家族』にいちばん振り回されているのは私かもしれない。
樹さん本人からも振り回されているのは私だけなんだから。


そんな事を考えているうちに、意地悪な手は髪の毛から滑り降りて、ゆっくりと私の身体を撫で回し始めて……とうとう私は降参した。
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