アイザワさんとアイザワさん

3月。①私のほんとうの『家族』。


3月の初め。
それは『家族』からの突然の電話だった。


日夕勤を終えて帰宅すると、真っ暗な部屋でチカチカと赤い光が点滅しているのが見えた。


思わずため息を吐きつつ、部屋の明かりを点ける。予想した通り、その光は留守電の録音ボタンの点滅の光だった。


……年末に何も連絡して来なかったくせに、一体何の用事だろう。


また感情のない母の声を聞かなくてはいけないのかと憂鬱な気分になりながら、それでも『録音』ボタンを押した


それは、いつもの『母親』の声ではなくて……


『父親』からの電話だった。


久しぶりのその声は、懐かしさを感じるものではなく……思わず身震いをしてしまった。


「……初花、久しぶりだね。お父さん、家に戻って来たんだ。いつでもいいから一度家に顔を出しなさい。……連絡待ってるよ。」


『母親』のように来られるの?と聞く内容ではなかった。家に来なさい、とはっきりと言われて私は動揺した。


家に……戻る?

どこに?
私には戻る家なんてないじゃない。


だって、私は『家族』に捨てられたんだから。

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