アイザワさんとアイザワさん
おばあちゃんが亡くなった時だってお葬式が終わると家族から逃げるように赴任先へと戻って行ったのだ。
私が『母親』から捨てられても何も言わなかったあの人が、仕事が終わって家に戻って来たとは言え今更一体何の用事があると言うのだろう。
「初ちゃん。孝さんのこと、樹ちゃんには話したのかい?」
私は首を横に振った。
「樹さん、昨日も一昨日も夜勤だったの。私も昨日は朝から夕勤までの通しだったし……話をする時間が無くて。」
「今日はもう樹ちゃん、夜勤じゃないんだろ?ここに呼んで今話したらいいじゃないか。」
それでも夜勤明けで疲れてるかもしれないのに……と渋る私を横目に、源ちゃんは携帯を取り出してさっさと樹さんに電話をかけてしまった。
……ってか、いつの間に番号知ってるほど仲良くなってたんだろう。
「後から聞く方が信用されてないみたいで嫌な気持ちになるもんじゃないのかい?……さ、時間も出来たしパンでも選びに行くか。」
話をするんだったらわざわざ呼び出さなくてもいいはずで……ここに呼んだのは、ただ源ちゃんがパンを食べたかっただけかもしれない……
もう昼時は過ぎていたけど、私も『Milkyway』のパンとケーキの誘惑には勝てそうになかった。
ウキウキとパンを選んでいる源ちゃんの横でしょうがないなー、と言いながらも私もしっかりとパンとケーキを選んで、樹さんが来るのを待つことにした。