アイザワさんとアイザワさん

「どういうことですかー!」

しばらくして、カフェスペースに現れた樹さんを見て、驚きの声をあげた男がいた。


……しまった。木村くんの存在をすっかり忘れてた。


付き合ってるんですか?!付き合ってるんですね!?と詰め寄る木村くんを「うるせぇな、キャンキャン吠えんなよ。」と一蹴しながら樹さんは私達のテーブル席へとやって来た。



やっぱりちょっと寝不足みたいだ……巻き添えをくった木村くんにちょっと同情しつつも、無理に呼び出して申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


「樹さん、急にごめんね。」


「いや、いいよ。……何かあったんだろ?ちょっと元気が無かったから気になってた。」


その時、お待たせしましたぁーとふて腐れた表情で木村くんがシフォンケーキとブレンドを持って来た。どうやら寝不足で来たのに、抜かりなく注文していたようだ。


「相澤さん、嘘付きっすね。……初花さんと付き合ってないって言ってたのに……」


「はぁ?それ、いつの話だよ。俺はしばらく来てなかっただろうが。」


まずい。樹さんが苛立っている……


「ごめん木村くん。私、樹さんに大事な話があるの。」


これ以上ここに居座られるのも困るので、やんわりと『席を外して』とお願いする。
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