アイザワさんとアイザワさん
……痛ったぁい!!
膝、膝、打った!!
しばらく立ち上がれずに悶絶する。
そんな痛がっている私に頭の上から冷たい声が降ってきた。
「何やってんだ?ほんとバカだな。しかも体もまともじゃないのか?椅子一つ運べないのかよ。」
「ひ、ひどい……」
「源さん達待ってるだろ。椅子は持ってってやるから、さっさと立て。」
そう言いながら軽々と椅子を持ち上げ運んで行ってしまった。
……相澤にまた呆れられてしまった。
ぶつけた膝がじんじんと痛む。
情けなくて、ちょっと泣きそうだ。
あ、ほんとに涙が出てきた……
その時、相澤が戻ってきた。
「まだ立ってないのかよ。……ん?どした?」
半べそをかく私の顔を見て珍しく一瞬だけ心配そうな顔をした。
「立てないのか?」
そう優しく言いながら手を差し出してくれる。
「あ……ありがとうございます。大丈夫です。」
いつも悪態ばかりつかれているから、こんな優しい態度には慣れていない。なんだか調子が狂ってしまう。
それは相手も同じようだった。
「へぇ。素直にお礼を言うこともあるんだな……」
それはいつもあなたが怒りながら話しかけて来るからじゃないですか?そう思って相澤のほうを見る。
しかし、喉まで出かかった言葉は相澤の笑顔を見た瞬間、引っ込んでいった。
その笑顔は、今までみたことのないくらいあどけない表情だったからだ。