アイザワさんとアイザワさん

「ちょっと、いいですか？」


以外にも、沈黙を破ったのは樹さんだった。


「すみません。……口を出すべきではないと思っていたのですが。」


そう言いながらちらり、と源ちゃんのほうを見た。


源ちゃんはその視線を受けて今までの硬い表情が嘘のようにニヤリと笑った。


「樹ちゃんは、気がついたんだろ？話してもいいよ。」


「……源次さんは全部知ってたんですね。」


樹さんはそれだけを言うと、今度はお父さんに向かって話かけた。


「前に初花さんから5年前の話を聞いた時に、疑問に感じたことがあったんです。……お父さんはどうして初花さんが家を出たことを知っても何も手を差しのべなかったんだろうって。離れていても、帰って来ることがあれば流石に家族の変化には気がつきますよね。」


「源次さんが私にも初花さんの家族に会ったほうがいい、と言った訳が判りました。」


源ちゃんが頷いている。
そのまま話してもいいよ、と樹さんの言葉を促しているようだった。


私は訳が分からずに二人を眺めているだけだ。


母親も同じ反応だった。