アイザワさんとアイザワさん
「私はお義母さんが亡くなった時に、仕事先にどうしても戻らなければいけなかったけれど、佐知子をこの状況で置いていくことに不安がありました。」
「しばらく……源次さんの家に初花をお願いしようと思って、最初からお話はしていたんです。」
そう言ったお父さんの言葉に続けるように源ちゃんが話した。
「初ちゃんには黙ってて悪かったけど、翠ちゃんのことだけで頭がいっぱいになってる初ちゃんに話しても、ますます二人がギクシャクするだけだと思ったからなぁ。」
確かに、お母さんのことを現実から逃げたと、そう思っていた当時の私には母の事情は受け入れられなかっただろう。
「翠ちゃんが亡くなった時も、一緒にいるとお互いに辛いだけだからしばらく家おいで、って言うつもりだったけど…まさかその前にあんなことが起きるなんて…思ってなくてねぇ。」
源ちゃんの言葉を聞いて、お母さんがようやく口を開いた。
「初花……ごめんなさい。」
ずっと、ずっと謝りたかったと、涙をためた目でそう言いながら。