アイザワさんとアイザワさん

「お母さんはね、おばあちゃんが病気になる前からずっと心の病気にかかっていたの。」


おばあちゃんの病気に目を背けて、現実から逃げたと、そう思っていた私にとってお母さんの告白は考えもしないことだった。


そういえば、高校に入ったばかりの頃に、お母さんの職場で大きな移動があって、慣れない仕事に苦労して帰りが遅くなったり、眠れない日が続いていたことがあったっけな……と思い出した。


あれは病気の前兆だったのかな……


「病気だからと言って、何をしても許されるわけじゃないって分かってはいたの。だけど、おばあちゃんが亡くなってからすぐのことは、未だに思い出せなくて……初花が家から居なくなっているのに気がついた時には取り返しのつかないことになってたのね……。」


「源ちゃんから後で私が初花に何をしたのかを聞いて、自分のことが許せなくなるくらいに深く後悔したの。」


「初ちゃんがうちにいて、水元先生のところに通っている間に、佐知子ちゃんは入院してたんだよ。まぁ取り乱してたし、一人にしとく訳にもいかなかったからなぁ。」


じゃあ、あの頃からずっと今まで、お母さんは苦しんでいたのだろうか。
全て自分のせいだと思って。


苦しみの感じ方は人それぞれだから、誰が誰よりも苦しみが深い、とかそんな事は分からないけれど、お母さんも私と同じく深い苦しみの中に落ちていたことは容易に想像ができた。
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