アイザワさんとアイザワさん
「退院してから、佐知子は初花にずっと会いたがっていたけど、このままだとまた同じことの繰り返しになると思ったんだ。」
「源次さんに頼んで生方さんに連絡を取ってもらってね…家の事情を全てお話して初花のことをお願いできませんか、と頼みこんだんだ。虫のいい話だし、失礼なことは承知でお願いしたんだよ。生方さんの家にも迷惑をかけたことは知って……いたからね。」
お父さんはちらり、と私に視線を向けて話を進めた。
『迷惑をかけた』と言うのは、たぶん…馨さんとのことを言いたいんだろうと思った。
「お父さん、話しても大丈夫。…5年前のことは樹さんも全部知ってるから。」
私の言葉に安心したように少しだけ息を吐いて、またお父さんが話始めた。
「源次さんのところで落ちついてくれたら、生方さんに…大切な人に支えてもらったら、すぐに初花は自分を取り戻してくれる。そう思ってたんだ。……だけどそんな考えがいかに甘かったかってことをしばらくしてから思い知ったよ。」
「初花も、佐知子もすぐには立ち直れないほど深く傷ついていて、とても『家族』を取り戻す状態になんてなれなかった。私も、仕事をしながらこっちに戻ってきていたけど…佐知子に付き添うのにも限界を感じていたんだ。」