アイザワさんとアイザワさん


「私ね、もう振り返らないから。だから、もう…みんな私に謝ろうなんて思わないで。」


向き合ってみて分かった。


私は…二人に謝ることもしたくないし、謝って欲しいとも思っていない。



もう私たちはおばあちゃんがいた頃のような『家族』には戻れない。戻れないけど……戻れないなら、また新しい形に作り直せばいいってことを。




『家族』はね、年数を重ねると自然と形を変えていくものなの。
『家族』はね、造りあげることだってできるのよ。
……壊れたって何度でもね。




鞠枝さんが前に私に話してくれたことが、今なら理解できるような気がした。



私達は……時間はかかってしまったのかもしれないけど、形が変わってしまった部分を逃げずに見つめることができるようになったし、壊れた所を一緒に造り直そうと、そう思える所まで向き合うことができたのだ。


お互いを思う気持ちだけはずっと忘れていなかったのだから、また私達は新しい『家族』になれる。きっと。



「お父さん、お母さん。私、もう家には戻らない。」



「だけど……またたまに帰って来てもいいかな?庭の手入れだって大変でしょ?私、またこの庭に向日葵が咲いているところが見たいの。…いいかな?」
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