アイザワさんとアイザワさん

さっきの営業スマイルとは全く違った笑顔。整った顔立ちには似つかわしくない、甘い笑顔だった。

こんな顔もできるんだ……


不覚にも、一ヶ月前に置き去ってきたときめきを思い出してしまいそうになった。

はっ、このままではひざまずいてしまう。
膝だってまだ痛いのに。


「ありがとうございました。……しっ、失礼します!」私は慌ててその場を後にした。


源ちゃん達の所に戻ってからも、しばらく私の動悸は治まることがなかった。


***

家に帰ってから膝を見ると、びっくりするくらい紫色になっていた。

こりゃ、しばらくスカート履けないな……

と思ったけど、お店にいる時はジーンズやチノパンだし、今は毎日店に顔を出さなければいけない立場なので、何の問題もなかった。
しかし、しかしだ……。


「……女子力、落ちてないか?」
思わず呟く。


みんな相澤にばっかり注目するので、最近は何だか化粧もさぼりがちだった。


髪も巻いたりするのは面倒で、セミロングで軽くパーマをかけた髪はいつも後ろでひとまとめに結んでいるだけだ。


コンビニでは髪の色もあまり明るくできない。
ピアスもできない。


24歳の女としては、まずいくらいの勢いで女子力が下がっている……。
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