アイザワさんとアイザワさん

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私のおばあちゃんは、おしとやかでのんびりとした人だった。


おばあちゃんっ子だった私は、小さい頃から源ちゃんにずっと遊んでもらっていたから、源ちゃんゆずりのちょっと雑でおしとやか、とはとても言えない性格になった。


それは、早くに父親を亡くしたお母さんもおんなじで……小さい頃から源ちゃんに遊んでもらって『娘』のように育てられたお母さんだって源ちゃんに似て、ちょっと雑でおしとやかではない性格に育ってしまっていた。



おばあちゃんは、小柄で可愛らしい人だった。

お母さんは背が高くて、すらりとした体型だ。
私の体型はお母さんに似た。



小さい頃は、その長身でパンツスーツを格好良く着こなしてバリバリ働く姿に憧れていた。



お母さんは私が生まれてからもずっと働いていたから、ご飯はずっとおばあちゃんが作ってくれていた。



お母さんは料理が苦手だったけど、カレンダーに丸のついたおやすみの日には、必ず晩御飯を作ってくれた。私はそれが嬉しくて、楽しみで、小さい頃は丸の日を指折り数えて待っていた。



レパートリーの少ないお母さんの料理は一年中ほとんど同じ。



シチューにオムライスにハンバーグのどれかだったけど……いつの間にかその3つのメニューが私の好物になっていた。



そんな……私と同じめんどくさがりで、雑な性格で、料理の苦手なお母さんが、夏みかんの木を毎年手入れして、それを全部収穫して、手間のかかるジャムを作って私が来るのを待っていてくれたなんて……
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