アイザワさんとアイザワさん

真剣な表情にちょっとだけ驚いた。

でも、もうほとんど一緒に暮らしてるようなもんだと思うんだけどな…


そう思って樹さんにも伝えてみる。


「もうほとんど一緒に住んでますよね。あっ、今のアパートじゃ狭いですもんね……新しく住むとこを探すんですか?」


私の返事に、樹さんは一瞬だけ大きく目を見開いて、そして大きくため息をついた。



「いや、そうじゃなくて……」


そっか、自分の事に関しては鈍感だったんだよな…とか、忘れてたよ…とか、やっぱりお前はバカだよなぁ…とか小さい声でぶつぶつと呟いている樹さん。


…今話してる事、全部聞こえてますけど。と言うか、何が言いたいのか全く分からないです!


私の混乱が透けて見えたのか、樹さんはゆっくりと私に向き直ってはっきりと私が理解できるように、その言葉を告げた。



「初花、俺と結婚してくれる?」



突然の言葉に息ができないほど驚いてしまった私に苦笑いしながら樹さんが言葉を続けた。


「もちろん、今すぐにって訳じゃないんだ。お互いの親に会ってるって言ってもそういう挨拶をする為じゃなかったもんな。仕事だって…別の店に変わる事も考えないといけないし。」


「だけど…今日初花の家族に会って、初花が愛されていて大切にされているのを見たから……俺も、この手で大切な人を幸せにしたいって……愛している人と『家族』になりたい。そう思ったんだ。」
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