アイザワさんとアイザワさん
樹さんの言葉を聞いているうちに、だんだんと目頭が熱くなってきた。やがてその熱は頬を伝ってゆっくりと流れ落ちていき、止まる事なく頬を濡らしていった。さっきようやく止まった涙が、樹さんの告白を聞いてまた溢れ出して来たようだった。
ひっく、ひっくと子どものように肩を震わせて泣きじゃくる私を樹さんは穏やかな表情で見守っていた。
以前のように私が泣いていても戸惑う様子はない。
悲しくて泣いているんじゃないって…分かってくれているから。
そう。これは嬉し涙だ。
大切で、愛しい人の隣にずっといられる、という嬉しさ。
好きな人に想いが通じて『恋人』になって、そしてかけがえのない『家族』として隣にいて欲しいと求められた嬉しさ。
いろんな嬉しさが心の中で混ざり合って、涙が止まらなくなってしまったのだ。
「初花は、ほんとうに泣き虫だな。」
「でも、前は苦しい涙とか悲しい涙しか見てこなかったから…嬉しい気持ちで流す涙が見られてよかった。」
そう言うと、ハンカチを取り出してそっと溢れる涙を拭いてくれた。その後、ふと思い出したように私の目を見て話かけた。
「それでさ…俺、まだ初花から返事を聞いてないんだけど?」
樹さんが少し意地悪な顔になってにっこりと笑う。
この涙が嬉し涙だって知っているくせに、私の口からはっきり『返事』を言って欲しいと催促しているのだ。