アイザワさんとアイザワさん
返事はもう…決まっているでしょう?
何でも思い通りになるのはちょっとだけ悔しいから、私はこう伝えてみる。
「家に帰ってから…伝えますね。」
ここからだと30分もかからないけど、それまでは私だけが甘いプロポーズの余韻に浸ってやるんだ。
へぇ、と私の小さな抵抗も気にしない様子で、樹さんはニヤニヤと意地の悪い笑いを浮かべている。
「そんなに焦らすってことは、期待してもいいんだよな。どんだけ俺が感動する言葉を伝えてくれるんだろうな?」
「…お前さ、前に俺のこと泣き虫だって言ったよな?俺が感動して涙が止まらなくなるくらいの返事が聞けるんだろうなぁ。ははっ。楽しみだな。」
あれ?抵抗したつもりが、逆にハードル上がってませんか……
はぁ、と私はため息をつく。やっぱりこの人に私は勝てないし、たぶん一生逃げられない。
でも逃げられないな、と思いながらも喜んで飛び込んでいく自分は嫌いじゃないんだ。
「…樹さんって、小学生の頃とか好きな子のこといじめてませんでした?」
「今でもそうだろ?…気がついて無かったのか?」
呆れた表情でそう言いながら、そっと私の耳元に顔を寄せてこう囁いた。
「いつも、『好きな子』を散々いじめてただろ?……ベッドの上でさ。」