アイザワさんとアイザワさん
「……」
何も言葉を返すことができなかった。
意味を理解して、恥ずかしさに涙で濡れた頬がみるみるうちに熱くなっていく。
うつ向いて涙目になりながら、小さく「樹さんの…バカ。」と呟いた。
樹さんはそんな私を見ながら、楽しくてたまらない、といった感じでくっくっと喉を鳴らして笑い始めた。
プロポーズ…断ってやろうかな。
……断らないけどね。悔しいけど。
私の好きなこの人は、
優しいけれど、ちょっとだけ強引で、
温かいけれど、なかなか意地悪で、
泣き虫のくせに、私の事も泣き虫だと言ってくる。
分かりにくくて誤解されやすいけど、
心を許した人には素直に甘えてくれる。
歳上のくせに子どもっぽいところもあって…
ずいぶんと、可愛らしくて、愛しい人だ。
これから二人で手を繋いでアパートに戻ったら、今日という日が終わるまで『いじめられ』ながらプロポーズの返事を求められるんだろう。
返事はもちろん決まっている。
それを早く伝えたくてしょうがない私は、もうとっくに降参しているんだから。
私は…相澤 樹と『家族』になりたいんだ。