アイザワさんとアイザワさん

「……」

何も言葉を返すことができなかった。
意味を理解して、恥ずかしさに涙で濡れた頬がみるみるうちに熱くなっていく。


うつ向いて涙目になりながら、小さく「樹さんの…バカ。」と呟いた。


樹さんはそんな私を見ながら、楽しくてたまらない、といった感じでくっくっと喉を鳴らして笑い始めた。



プロポーズ…断ってやろうかな。

……断らないけどね。悔しいけど。



私の好きなこの人は、


優しいけれど、ちょっとだけ強引で、

温かいけれど、なかなか意地悪で、


泣き虫のくせに、私の事も泣き虫だと言ってくる。



分かりにくくて誤解されやすいけど、

心を許した人には素直に甘えてくれる。



歳上のくせに子どもっぽいところもあって…


ずいぶんと、可愛らしくて、愛しい人だ。




これから二人で手を繋いでアパートに戻ったら、今日という日が終わるまで『いじめられ』ながらプロポーズの返事を求められるんだろう。



返事はもちろん決まっている。



それを早く伝えたくてしょうがない私は、もうとっくに降参しているんだから。



私は…相澤 樹と『家族』になりたいんだ。


< 298 / 344 >

この作品をシェア

pagetop