アイザワさんとアイザワさん
②『一緒』にいましょう。
3月下旬。
新しいバイトの子が入って1週間経った。
研修だって終わったし、雰囲気にも慣れてきた。そろそろ、例の質問が飛び出すはずだ。
私はすでに答えを用意している。
いつでも、こい。
「あのー……副店長?」
ん?来たか?
「副店長と、店長ってぇー」
……来た。
私は、被せ気味に用意している答えを言う。
「名字が同じだけだから。きょうだいでも、夫婦でもない。赤の他人だから。」
……決まった!!
これで余計な視線に惑わされずに仕事ができる。すっきり、爽快だ。
「…でもね、こんな事言ってるけど、そのうち『家族』になるんだよねぇー?」
わっ、わっ、何てことを言い出すんですか!
赤の他人だなんて、白々しいこと言っちゃってね、なんて話が望んでいない方向に飛んでいくもんだから、私は慌てて発信元を注意する。
『副店長』として、これ以上スタッフにあらぬ誤解をされちゃうと仕事がやりにくくてしょうがない。
…まぁ、誤解ではないことは置いといて。
「茜さん。…あまりプライベートなことは仕事中はお話しないでくださいね。」
私の注意をあら、ごめんね。なんてさらっと受け流して茜さんは笑っている。