アイザワさんとアイザワさん

生方家を後にした私達は、スーパーで買い物をして、アパートへと戻って来ていた。


今日は二人でハンバーグを作ろうと約束をしていた。
キッチンで食材を揃えながら、準備をしている私の横に立って樹さんは私を気遣うように「そういえば、具合はもう大丈夫なのか?」と聞いてきた。



実は家に帰ると決めた日から、胃が痛くて気分のすぐれない日が続いていたのだ。


今までは細かい事は気にしない人間だ、って自分に暗示をかけていたようなものだったから、気持ちの変化が体に現れてくることは無かった。


…違う。あったとしてもいつもお酒で誤魔化して感じないようにしていた。



ちょっとしたことですぐ不安になる人間だと自覚してからは、不安な事や心配な事があると、その気持ちはすぐにシクシクとした胃の痛みに変わって、私は時々その痛みに悩まされるようになっていた。



「もう大丈夫です。家に帰るまでは、心配で眠れなくてちょっと具合も悪かったんですけど……心配事は無くなりましたから。」


私がそう言うと、なぜか樹さんは心の底から安堵した表情を見せた。


どうしたのかな?
その見慣れない表情を不思議に思っていると、


「あのさ……怒らないで聞いてくれよ。」

と私の様子をうかがうように聞いてきた。
< 304 / 344 >

この作品をシェア

pagetop