アイザワさんとアイザワさん
「で?…気になっていたことは、これで終わりか?」
樹さんが探るように聞いてくる。
その目はこれ以上『こいつ』なんて呼ばれるのは嫌だからな、と言っているようだった。
その様子が可愛らしくて、私はふふっ、と笑ってまだちょっとだけ拗ねている樹さんの口唇にキスを落とした。
樹さんの気持ちは分かったから、びっくりさせちゃってごめんね。そんな気持ちを込めたキスだ。
「…私が、今何を考えてるか分かりました?」
前にどんな気持ちでキスをしてるんだ?って聞かれたことがあったっけな、なんて思い返しながら私からもそう聞いてみる。
「…分かんねぇよ。」
そう言った口元はまだ若干尖っていた。
あーあ…子どもみたいに拗ねちゃって…と、ちょっと呆れていると
「分かんなかったから、もう一回。」
樹さんはそう言って私の手を引き寄せると、私がえっ?と思う間も無く口唇を重ねてきた。
そのまま抱きしめられて、深く口唇を重ねられる。角度を変えて何度も交わすキスに、だんだんと体温が上がっていった。
頭の後ろに回されていた手がゆっくりと背中を撫で始めたその瞬間に、
「んっ、いっ…樹さんっ、ちょっと待って。」
私は思わず声を上げてしまっていた。