アイザワさんとアイザワさん
「鞠枝ちゃん、あらためてプロポーズさせて。…僕と結婚して。」
「……はぁ?」
端から見たら感動的なシチュエーションなんだけど、間の抜けた声が出てしまったことは仕方ないと思う。
善ちゃん…この状況分かってる?
この前居酒屋で最初にプロポーズされた時に、私はすぐに断った。別れだって覚悟していた。
『初花ちゃんがしあわせになるまでプロポーズを受けない』そんな我が儘でこの人を縛り付ける訳にはいかないと思ったから。
なのに…何で再びプロポーズされてんの?私。
「…意味分かんない。」
人が、どんな思いでプロポーズを断ったと思ってんの?
呻くように呟いた私に善ちゃんがにっこりと笑って言った。
「ほんとは分かってるでしょ?早く『はい』って言ってコレ、受け取ってよ。もぅ、緊張しておかしくなりそうなんだけど。」
…おかしくなってしまえばいい。本気でそう思った。
そうだった。この人は人当たりはソフトなくせに、一旦こうと決めたことは譲らない。頑固でなかなか話が通じない人だった。
説得するのは…かなりの力がいるんだった。