アイザワさんとアイザワさん
【番外編】2月14日のハナシ。
2月14日。
間近に控えたこの日をチェックしつつ、私ははぁーとため息をついた。
はい。バレンタインデーですよ。
女子なら間違いなく知っていますよ。
問題は…私に普通の『女子』のように手作りチョコを作るスキルが無いという事だ。
相沢 初花 25歳。
相澤 樹さんと付き合いはじめてから…初めてのバレンタインデーを迎える予定。
独り暮らしを始めてからもう5年弱。
キッチンは綺麗に整頓されている。
だって……ほとんど使ってないからね!
私の身体はコンビニのお弁当と、スーパーのお総菜で出来ているのだ。
***
「この前と比べたら、ずいぶん呑気な悩みね。」
ホットミルクを口にしながら呆れ顔で笑ったのは、私の『心のお姉ちゃん』仙道 鞠枝さんだ。
『この前』私は樹さんの義理の妹の裕美さんを彼女と勘違いして逃げ出してしまい、鞠枝さんの家に駆け込んで散々迷惑をかけてしまった。
今日はそのお詫びも兼ねて、私達は行きつけのカフェ『Milky Way』に来ていた。
「けっこう真剣に悩んでるんですけど…」
一時期鞠枝さんの実家の生方家に住まわせてもらっていたこともあり、鞠枝さんは私がどんなに料理ができない人間かを知っている。
「まぁ…手作りはハードル高いかもしれないわねぇ。…今年は買ったら?」
来年まで修行しなさい、とあっさり彼女は諦めることを提案してきた。