アイザワさんとアイザワさん

その時、厨房のほうから「あれ?初花ちゃん来た?」と声が聞こえた。

顔を見なくても分かる。その声は小山さんだ。
イケメンは声だって素敵だ。

でも…今『初花ちゃん』って言った?言ったよね?!いつもは『相沢さん』なのに。

そんな優しい声で名前を呼ばれたら、ときめいちゃって…思わずひざまずいてしまうじゃないですか!

落ち着きを無くしている私を見てくすりと笑いながら、小山さんは「はい、ご注文の品物です。」と言ってケーキを出してくれた。


ケーキは私のリクエストでいろいろな種類のチョコケーキの詰め合わせにしてもらっていた。

ガトーショコラにフォンダンショコラ、ザッハトルテに、マフィン、フランボワーズソースがからんだパウンドケーキ…

色とりどりのケーキ達を前にして、沈んだ気持ちも一気に盛り上がった。

「期待以上です!小山さん、ありがとうございます。」

弾んだ声でお礼を言うと、小山さんはもう1つ手のひらに乗るくらいの白い小箱を取り出して私の目の前にポン、と置いた。

「…これは?」

「初花ちゃんに特別サービス。お祝いありがとね。」


それから、ちょっとだけ声を潜めて言った。

「相澤さんには食べさせちゃダメだよ。…これは初花ちゃんの為だけに作ったんだからね。」

えっ、『相澤さん』?

その言葉を聞いて、一気に顔が赤くなる。…もしかして付き合ってることばれてます?
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