アイザワさんとアイザワさん
「少々お待ちください」
7月は切ない想いに涙を流すのです。
7月。
商店街では七夕のイベントがあり、各店舗は笹を店頭に飾る。サンキューマートでも、お客さんに短冊を書いてもらったりして、毎年イベントには参加することになっていた。
生方さんはこうした地域に関わるイベントを大事にしていた。今年はどうなのかな?と思っていたら、「今までの恒例なら、そうしましょう。あと、相沢さん、他に参加してた行事とかがあったら教えてね」という相澤オーナーの一言で、あっさり参加が決まった。
オーナーはのりのりで、どこの店よりも立派な笹を用意してきた。
見た目ヤクザなおじさんが、ウキウキと笹を持っている絵はなかなか笑えるものがあり……
それを目撃した私と茜さんは、しばらく笑いを堪えるのに必死になった。
***
「ねぇ、初花ちゃん。網ってどうやって作るんだったっけ?」と茜さんが聞く。
朝日勤の私と茜さんは、仕事の合間を縫ってせっせと七夕飾りを製作していた。あの、大きな笹に飾るのだ。ちんたら作っていたら間に合わない。
「まず、折り紙を縦に四つ折りにするんですよ。で、交互にハサミを入れていくんです。」
商店街は地元だし、ずっと飾りを作り続けてきたので、私はこうした作業は得意なのだ。
「あ、なるほどねー。去年もやったはずなのに、覚えてないものよねぇ……」
茜さんは今年で3年目だ。内心もうちょい覚えてくれても……と思わなくもないが、彼女はあまり関心のないことはすぐに忘れてしまう性格らしく、それに慣れた私はさっさと教えてしまったほうが作業がはかどることを知っていた。