アイザワさんとアイザワさん

「お、やってるな。」

おつかれ、と言いながら相澤が店に入って来た。

私は無言で折り紙の束を渡す。

「……何だよ、これ。」

「ノルマです。」

あなたのおじさんが、張り切って例年よりばかデカイ笹を持って来たんです。これくらいは当たり前でしょ?と思いつつ。

……口には出さないけどね。


「俺、遠視だから、細かい作業苦手なんだよ。……短冊書くだけじゃダメか?」と相澤は眼鏡に手をやりつつ言う。


「ダメですよ。全員参加。網なら簡単だから作ってください。」


「……じゃあ、四つ折りだけまずやるから、相沢さ、折ったやつに印つけてくれよ。ポップ書いたりする時に使うクレヨンかクーピーなかったっけ?」


「ありますよー。……店長、作ったことあるんじゃないですか。七夕飾り。」と言いつつ、何でクレヨンで線を付けると切りやすい、って知ってるんだろう?と思った。


おばあちゃんから教えてもらって、おばあちゃんオリジナルの技だと思ってたけど、結構定番のやり方だったんだろうか?


ちょっと疑問に思いつつも、折り紙の束を見るとそんな疑問も消え、私は作業に集中することにした。
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