アイザワさんとアイザワさん
そんな私達の様子を見ながら、不機嫌なワンコ、いや男がカウンターへと入って来た。手には先ほど私達が注文したケーキを乗せたトレーを持っている。
「Milky Way」ではイートインのお客様にデコレーションのサービスをしてくれることがある。
スコーンを選んだ人にクリームやジャムを付けてくれたり、マフィンを選んだ人には温め直してバターを乗せてくれたり……大きなカフェではしてくれないような、気の効いたサービスをしてもらえるのが、私がここを気に入って通う理由の一つだ。
私が今日選んだ桃のコンポートがたっぷり乗ったヨーグルトムースのケーキにはシャーベットが添えられ、相澤が選んだオレンジピールが入ったショコラケーキにはバニラアイスが添えられていた。
ますます美味しそうに飾られたケーキを前にして、下がっていた気分も再び浮上した。
「わぁ、素敵!!」
思わず声をあげると、厨房のほうから「ありがとう」と声がした。
その声を聞いてますますテンションが上がる。
「相沢さん、いらっしゃいませ。」
そう言って手を振ってくれたのは、「Milky Way」のイケメンパティシエの小山 奏一(こやま そういち)さんだ。
サラサラとした、少し茶色がかった髪、切れ長な瞳、形のよい唇。
今日も完璧なイケメンです!小山さん!
そのイケメンぶりに満足しながら、私もにっこりと手を振り返す。
もちろん、彼の存在が私がここに通いつめるいちばん大きな理由であるのは言うまでもない。