アイザワさんとアイザワさん
そんな私を相澤は不思議そうに見ていた。
「まさか、今までずっと俺が怒って嫌がらせしてると思ってたのか?」
……それ以外の何があるって言うの?
「参った。他人のことはあんなに敏感に気づくのに、自分のことはさっぱりなんだな。…お前、やっぱりバカだな。」
「なっ……!!」
ストレートにバカにされて、何か言い返そうと口を開いた瞬間、相澤は私の方にぐっ、と迫ってきた。逃げる間もなく玄関のドアを背にして、私は身動きが取れなくなってしまった。
「な、何するんですか?!」
慌てる私に構うことなく、相澤は私の顔のすぐ左側の壁に手をついた。
そのまま顔を近づけて……私の頬にゆっくりとキスをしてきた。
まるで、あの送別会の日に私がしたキスの再現のような、そんなキスをされて、顔が真っ赤に染まっていくのが自分でもはっきりと分かった。
そんな私の様子を見ながら『確信』したように相澤は言った。
「……やっぱりな。……送別会の日、お前俺にキスしただろ?」
……気づかれていると思わなかった。
私は何も言い返せなかった。
これじゃあ『しました』と言っているのと同じだ。
誤魔化せない……そう思った私は「……気づいてたんですか?」と一言だけ聞いた。
「何度か意識がなくなってたからな。だから最初は夢かと思ってた。カマかけてみたけど……これではっきりしたな。」