アイザワさんとアイザワさん
焼き上がったトーストにバターを塗り、マーマレードジャムを落とす。
一口かじると甘くて苦い香りが口の中に広がった。おばあちゃんのジャムは、もう少し甘酸っぱい味がしたな、と昔を懐かしく思い返す。
……そう言えば、相澤もジャムを買い取ってくれた時にマーマレードが好きだと言っていた。
ふと思う。確か、「俺も」好きだと言っていなかったっけ?
……私がマーマレードジャムを好きなことを知っていた?
胸に違和感が広がっていく。
最近、相澤のことを考えるといつもこんな違和感に襲われる。
七夕飾りを作った時もそうだ。
おばあちゃんの作り方を知っていた。
深く考えないようにしていたけど……
相澤は以前から私を知っていた?
そう思う時がある。
……知りたい。
でも、心の箱が『これ以上考えちゃだめだよ』と言うように軋むのだ。
考えこんでいると携帯が鳴った。
久しぶりの鞠枝さんからの電話だった。