アイザワさんとアイザワさん

14時過ぎ。待ち合わせた「Milky Way」は忙しい時間を過ぎたのか、珍しく空いていた。

鞠枝さんはもう来ていて、大きな窓から私を見つけると『ここに座ってるからね』と言うように、にっこりと手を振った。

志帆さんに挨拶しながら、カフェスペースへと向かう。

「初花ちゃん、いらっしゃい。」陽介さんが挨拶してくれた。今日は木村くんはお休みのようだ。

「あいつ、実習だって。前期の試験もギリギリだったみたいだし、すごい焦ってたよ。」

木村くんは教育大の学生だ。この前色々とあることないことを言われたので、困ってるんだ……と思ったらちょっとニヤリとしてしまった。

「あ、初花ちゃん、悪い顔だね。」

陽介さんがからかうように言う。


そう言って笑う陽介さんの眼鏡の下の顔は、いつ会っても穏やかで、表情を崩さない人だな、と思う。まるで『穏やかな笑顔』の仮面をつけているみたいだ。


そう思いながらじっと見てしまっていたらしい。「俺に見とれても何も出ませんよ」と言われてしまった。


「初花ちゃん、私待ってるんだけど!!」


テーブル席から鞠枝さんが声をあげた。
……わぁ、ごめんなさい!

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