君に溺れていいですか?
入学式
<茉莉side>
今日は待ちにまった青葉第二高等学校の入学式!
「あ、待って茉莉」
「なに?お母さん」
「具合は悪くない?」
「大丈夫だよ」
「そう・・・。何かあったら…」
「右ポケットに入ってるメモを先生に見せる、でしょ?」
「ええ。…いってらっしゃい」
「本当に大丈夫だから。行ってきまーす。」
過保護だな、お母さん。
確かに私は小さいころから体がよくないし病院にもたくさんお世話になった。
今もなんだけど・・・。
「ハル!」
「茉莉。おはよう」
「おはよう。・・・ごめんね。高校生だってのに一緒に登校なんて。」
「別に大丈夫だよ?」
「・・・嫌だったら言ってね。お母さんには内緒で別々にするから」
「だから嫌じゃないって。むしろ大歓迎」
「本当?だったら嬉しいな!」
初めての道を歩く。ちょっと怖いけど、幼馴染のハルとだったらなぜか安心する。
「着いたよ。」
「わぁー!!」
受験で来たことしかない場所。
今日からここが私の通う学校!
「茉莉、行こう。遅刻したら大変」
「うん!」
えっと、まずはクラス表を見るんだよね。
そういえば、ハルは特進コースだから・・・
「茉莉は1-Cだよ。僕は…1ーBだ」
「でも、校舎違うんだよね・・・?」
「うん・・・」
ハルが少し寂しそうな顔をする。
「だ、だけど大丈夫だよね!お互い頑張ろう!」
ハルにはどうしてもそんな顔させたくなかった。
「そうだね。入り口のところで受付したら、案内してくれるから」
「わかってる!じゃあ、あとでね」
「うん。じゃあね」
ここからは自分で頑張らなくちゃ!
「1ーⅭの人~!こちらでーす!」
あそこに行けばいいのかな・・・?
人見知りの私としては結構つらい。けど…
「あ、あのっ!」
「うん?あっ!1-Ⅽの子?」
「は、はい!あ、九条茉莉です」
「はーい。じゃあ着いてきてね!」
「はいっ。」
明るい感じで良い人。胸元の名札には“葉瀬瑠美”と書いてある。
瑠美先輩、ちゃんと覚えておこう。
「よーし、着いたよ!」
「あっ、ありがとうございました!」
「いーえー。頑張ってね!」
「はっ、はい!」
…元気に返事をしたものの、何を頑張るのかな?
黒板に座席表がある。・・・ここ…か。
私の席は窓側から2列目の席。男子、女子と交互になっているっぽい。
早速席に着き、リュックの中のものを机に入れる。
「おはよう。菊池 愛花です。よろしくね」
「え、あっ、く、九条 茉莉です。こちらこそ、よろしく」
話しかけてきたのは前の席の可愛らしい女の子。
あまりにびっくりしすぎて、かみかみ…。
「あはは、そんなに緊張しなくていいのに」
「え、あっ、うん」
「あはは。茉莉ちゃんおもしろーい」
「そうなのか・・・な?」
ポンっ。
ビクッ!!誰かに肩を優しく叩かれびっくりする。
「おはよう。というか、初めまして」
「初め、まして・・・?」
「七瀬 瑞穂です。よろしくね」
「あ、九条 茉莉です。こちらこそ…」
「もぅ~、みずっちダメでしょ!!」
「ごめんね。驚かせて、あまりにも2人の会話聞いててすごく面白かったから」
「あ、大丈夫・・・。というか、みずっちって?」
「あ~、愛花とは同じ中学校なんだ」
「そうだったんだ!2人ともよろしくね」
いいな。ハルとは一緒だけど、コースが違うもんな…。
純粋に憧れる。
ガラっ。
「席着けー」
わ、もうそんな時間か…。愛花ちゃんと瑞穂ちゃんともうちょっと話したかったな。
「1-Ⅽ担任、日野龍だ。教科は数学、よろしく。
早速で悪いが、あと20分ぐらいで入学式が始まる。並び方とかはもうわかってるな」
「はい」
クラスのみんなが返事をする。
「それと、九条さん」
「は、はい」
「入学生代表の言葉、大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です」
「ならいい。じゃーあ、10分になったら廊下に並んでろよ」
急に振ってこないでほしいな…。クラス中の目線が私に来たよぉ~。
「ねぇ、茉莉ちゃんって代表なの?」
「えっ、うん」
やっぱりその話題だよね・・・。
「すごーい。あれって、トップで合格した人がやるんでしょ?」
「そう…らしいね。まぁ、私の場合はまぐれだと思うよ・・・」
「そうなのー?でもすごいよ!ねぇ?」
「うん!頭もいい上に可愛いとか・・・!」
「いやいや・・あ、愛花ちゃん、瑞穂ちゃん」
「なにー?」
「わ、私もう体育館行かなきゃいけないから・・・その」
「そっかー!リハーサルするんだもんね。頑張ってね」
「ありがとう」
「戻ってきたら、私たちの恋話、聞いてねー!!」
「うんっ!」
どんな恋の話なのかな~。
私で良いのかな・・・?初恋もまだなのに。
不安な気持ちになりながらも、体育館へ向かった。